複数の食べ物にアレルギーを持つ子どもや大人にとって、「どの治療法を選ぶべきか」は大きな悩みです。2026年7月27日、米スタンフォード大学医学部が主導した臨床試験の最終結果が学術誌『JAMA Pediatrics』に掲載され、抗IgE抗体薬オマリズマブ(製品名:ゾレア)と経口免疫療法(OIT)を比較したデータが公表されました。本記事では、この最新研究の内容と、同時期に起きているパルフォルジア(ピーナッツアレルギー用OIT製剤)の販売終了、そして日本国内の承認状況との違いを、公的機関の一次情報をもとに整理します。
何が発表されたのか——OUtMATCH試験ステージ2の結果
今回の研究は、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が資金提供する大規模臨床試験「OUtMATCH」の第2段階にあたります。対象は、ピーナッツと少なくとも2種類以上の食物(牛乳・卵・小麦・カシューナッツ・ヘーゼルナッツ・クルミなど)にアレルギーを持つ1〜55歳の117人(試験参加時の年齢中央値は7歳)です。
参加者は次の2グループに分けられました。
- グループA:オマリズマブ単独療法を1年間継続
- グループB:オマリズマブ投与を8週間行った後、残りの期間を複数アレルゲン経口免疫療法(OIT)に切り替え
試験終了時に、3種類のアレルゲン食品(ピーナッツを含む)をそれぞれ2,000mg(ピーナッツ約8粒相当)ずつ症状なく食べられるかどうかを評価した結果、オマリズマブ単独群では36%が成功したのに対し、OIT群では19%にとどまりました。NIAIDは、この差の主な原因を「OIT群における副作用(アレルギー症状や消化器症状)による治療中断率の高さ」と説明しています。実際、治療を最後まで完了できた人だけで比較すると、両群の成功率はほぼ同水準でした。
オマリズマブ(ゾレア)とは何か
オマリズマブは、アレルギー反応を引き起こす抗体IgEに結合してその働きを抑える注射薬です。米食品医薬品局(FDA)は2024年2月、偶発的な誤食による重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーなど)のリスクを減らす目的で、1歳以上の複数食物アレルギー患者に対するオマリズマブの使用を承認しました。ただしFDAは「オマリズマブは食物アレルギーを治すものではなく、日常的な原因食品の除去は引き続き必要」と明記しています。
選択肢の変化——パルフォルジアが販売終了へ
一方、ピーナッツアレルギー治療薬として2020年に世界で初めて承認された経口免疫療法製剤「パルフォルジア」は、製造販売元のStallergenes Greer社が2026年7月31日をもって商業展開を終了すると発表しました。同社は「品質・安全性・有効性上の問題ではなく、経営・事業戦略上の判断」としています。これにより、正式に承認された既製のOIT医薬品という選択肢は一時的に失われ、各国の医療現場では未承認の自家調製OITや、今回話題のオマリズマブへの関心がさらに高まっています。
日本の現状との比較
日本国内では、ゾレア(オマリズマブ)は難治性の気管支喘息、重症の季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)、特発性の慢性蕁麻疹の3疾患にのみ保険適用されており、食物アレルギーに対する保険承認は2026年7月時点でまだ行われていません。食物アレルギーへの使用は臨床研究の枠組みに限られています。
また経口免疫療法についても、日本では一部の大学病院・専門施設が臨床研究として実施しているものの、パルフォルジアのような承認医薬品としてのOITは存在せず、保険診療の対象外です。米国で「治療の主流」とされてきたOITが商業的な岐路に立たされている一方、日本では研究段階にとどまっているという点で、両国の状況には大きな差があります。今後、オマリズマブの食物アレルギー適応が日本で承認されるかどうかは、費用対効果や長期安全性データの蓄積が焦点になるとみられます。
家族・患者が知っておきたいポイント
- オマリズマブもOITも、食物アレルギーを完治させる治療ではなく、誤食時のリスクを減らす、または食べられる量を増やすための選択肢です。
- 研究を主導したスタンフォード大学のシャロン・チンスラジャ医師は「治療の目標は患者ごとに異なる。誤食からの保護を望むのか、日常的に食べられるようになりたいのかで、選ぶべき治療は変わる」と述べています。
- 日本ではいずれの治療も保険適用の食物アレルギー治療としては未承認のため、実施を検討する場合は必ず専門医療機関(大学病院のアレルギー科など)に相談してください。
まとめ
2026年7月に公表された最新の臨床試験結果は、複数の食物アレルギーを持つ患者にとって「オマリズマブ単独療法」が経口免疫療法よりも高い成功率と低い中断率を示したことを明らかにしました。同時期に唯一の承認OIT医薬品パルフォルジアが販売終了となることで、治療の選択肢は今まさに変化の途上にあります。日本ではまだ研究段階の治療が中心であり、海外の動向を参考にしつつも、自己判断での導入は避け、必ず医師の指導のもとで検討することが重要です。
出典:Stanford Medicine(2026年7月27日)/NIH/NIAID ニュースリリース/FDA承認発表/Stallergenes Greer社発表(パルフォルジア販売終了)
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。食物アレルギーの診断・治療・除去食の実施については、必ず医師・専門医にご相談ください。
