食物アレルギーの根治を目指す研究は、誰がどのようにお金を出して支えているのでしょうか。2026年、米国では患者支援団体FAREが業界団体からの投資を受けて大型の共同研究プログラムを始動させ、日本では国の研究開発機関AMEDが公的資金による公募・審査を行いました。両者の資金調達モデルを比較すると、日本の食物アレルギー研究を取り巻く環境の特徴が見えてきます。
米国:FAREの「Mind Meld」構想と業界団体からの投資
米国の食物アレルギー患者支援団体FARE(Food Allergy Research & Education)は、2026年2月25日、落花生(ピーナッツ)業界団体National Peanut Board(NPB)から、5年間で250万ドルの投資を受けると発表しました。この資金は、FAREが進める研究モデル「Mind Meld」を支援するものです。
Mind Meldは、FAREのCEOであるSung Poblete氏が、がん研究支援団体Stand Up To Cancerを率いていた経験をもとに導入した協調的研究モデルとされています。免疫学分野の第一線の研究者を結集し、食物アレルギーの原因となる免疫反応を「再教育」する経路の解明を目指すもので、基礎研究の成果を早期に臨床応用へつなげることを目的としているとされています。
NPBは過去20年間で累計4,300万ドル以上をピーナッツアレルギーに関する研究・啓発に投資してきたとされており、今回の投資はその一環に位置づけられます。さらに2026年7月には、FAREが複数の研究機関・分野をまたぐ学際的な研究チームを対象とする新プログラム「Mind Meld Team Grant Program」の公募(Request for Applications)を開始したと発表しており、研究概要の事前提出(Letter of Intent)の締切は2026年9月2日とされています。
日本:AMED「免疫アレルギー疾患実用化研究事業」による公的助成
一方、日本で食物アレルギーを含む免疫・アレルギー疾患の研究に公的資金を配分している中心的な機関が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)です。AMEDは「免疫アレルギー疾患実用化研究事業」という枠組みで、リウマチ・アトピー性皮膚炎・薬剤アレルギー・食物アレルギーなど幅広い免疫アレルギー疾患を対象に、毎年度公募・審査を実施しています。
令和7年度の同事業では、公募期間が令和7年1月8日から2月5日までとされ、書面審査・ヒアリング審査を経て令和7年5月に採択課題が公表されました。このうち「食物アレルギーの解決に資する研究」の区分は申請数5件に対して採択数1件で、相模原病院臨床研究センターの佐藤さくら氏による「少量導入経口免疫療法によるクルミアレルギー治療のエビデンス構築」という課題が採択されています。この事業は免疫・アレルギー疾患全般を対象とした国の予算に基づく公募制度であり、食物アレルギーに特化した予算枠が別途設けられているわけではない点が特徴です。
日本との比較:資金の出どころと規模の違い
米国と日本の資金調達モデルを比較すると、いくつかの違いが浮かび上がります。
| 米国(FARE・Mind Meld) | 日本(AMED・免疫アレルギー疾患実用化研究事業) | |
|---|---|---|
| 資金の出どころ | 患者支援団体を通じた業界団体・民間からの投資(NPBなど) | 国の予算に基づく公的研究費 |
| 対象の絞り込み | 食物アレルギーに特化した学際的研究プログラム | 免疫・アレルギー疾患全般の中の一区分として食物アレルギーを公募 |
| 規模の目安 | NPB単独で5年250万ドル、過去20年累計4,300万ドル超 | 令和7年度「食物アレルギー」区分は申請5件・採択1件 |
| 研究体制 | 複数機関・複数分野の研究者によるチーム編成を要件化 | 個別の研究代表者・代表機関単位での採択が中心 |
このように、米国では患者支援団体が業界団体からの投資を集め、学際的な大型プログラムとして資金を投じる仕組みが機能している一方、日本では国の公的研究費の中で食物アレルギーが免疫・アレルギー疾患全般の一区分として扱われており、特化した研究枠の申請・採択件数は限られているとされています。研究資金の規模や体制の違いは、そのまま研究の速度や範囲に直結するわけではありませんが、今後の食物アレルギー研究の進展を考えるうえで、資金調達のあり方にも目を向ける意義はありそうです。
まとめ
2026年、米国のFAREは業界団体からの投資を受けて学際的な研究プログラム「Mind Meld」を拡大し、日本ではAMEDの公的研究費「免疫アレルギー疾患実用化研究事業」の中で食物アレルギー領域の研究が採択されました。米国は患者支援団体を介した産学連携型の大型投資、日本は国の予算に基づく公募制度という、資金調達の枠組みそのものに違いが見られます。研究の中身だけでなく、それを支える資金の仕組みにも注目することで、食物アレルギー研究の全体像がより立体的に見えてきます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。食物アレルギーの診断・治療・除去食の実施については、必ず医師・専門医にご相談ください。
