2026年7月、食物アレルギーをめぐる研究・国内外の制度に相次いで新しい動きがありました。乳児期の治療が将来のアレルギー発症を左右する可能性を示す国内研究、原因食物の顔ぶれの変化、そして海外での表示制度・研究方針の見直しなど、今月押さえておきたいトピックをまとめます。
国内の最新研究
①乳児期のアトピー早期強化治療が3歳時点の食物アレルギーを抑制(国立成育医療研究センター、2026年3月17日発表)
国立成育医療研究センター アレルギーセンターの山本貴和子氏らの研究チームは、乳児期早期に発症したアトピー性皮膚炎に対する「早期強化治療」(早期から炎症を十分に抑える治療)が、3歳時点でも食物アレルギー、特に鶏卵アレルギーの有病率低下と関連することを、多施設共同ランダム化比較試験に基づく長期追跡研究として世界で初めて明らかにしました。2歳時点でのスギ花粉感作についても早期強化治療群で有意に低い傾向が確認された一方、身長・体重など成長面では3歳時点で両群に差はありませんでした。研究成果は国際誌「The Allergy」に掲載されています(出典:国立成育医療研究センター プレスリリース)。
②食物アレルギーの原因、ナッツ類が鶏卵を上回り最多に(国立成育医療研究センター、2026年2月10日発表)
同センター救急診療部の大西志麻氏らの研究グループは、2015〜2024年の10年間に同センターの救急外来を受診した食物アレルギー症例(約2,800件)を分析し、2017年以降に乳児の鶏卵早期摂取が提言・推奨されるようになった前後で、原因食物の内訳がどう変化したかを検証しました。その結果、救急受診の原因食物としてナッツ類が鶏卵を上回り最多になったことが判明。研究チームは「早期食物導入の推奨だけでは全ての食物アレルギー発症を抑制できない」「家庭や医療者へのさらなる啓発・支援が必要」「ナッツ類など新たに増加しているアレルゲンへの対策が重要」という3点を課題として挙げています。研究成果は「Clinical and Experimental Allergy」誌に掲載(出典:QLifPro医療ニュース/国立成育医療研究センター)。
③日本アレルギー学会「アレルギーの手引き2026」公開(2026年5月21日)
一般社団法人日本アレルギー学会は、厚生労働省補助事業「アレルギー情報センター事業」の一環として、医療従事者が身につけておくべき知識をまとめた「アレルギーの手引き2026」を2026年5月21日に公開しました。食物アレルギーを含むアレルギー疾患全般について、最新の知見に基づく診療の考え方が整理されています(出典:日本アレルギー学会)。
海外の最新動向
①米FDA、木の実類の対象品目を23種から12種に整理・ココナッツを主要アレルゲンから除外
米国食品医薬品局(FDA)は、食品アレルゲンに関するQ&Aガイダンス第5版で、木の実類(tree nuts)の対象範囲を見直し、従来23種類としていたものを12種類に整理しました。ココナッツは植物学的には核果(ドルーパー、桃やさくらんぼと同じ分類)であり、木の実アレルギーとの交差反応を示す科学的根拠が乏しいとして、主要アレルゲンのリストから除外されています。あわせて、牛以外の家畜(山羊・羊など)の乳や、鶏以外の鳥類(アヒル・ガチョウ・うずらなど)の卵についても、表示上「乳」「乳製品」「卵」に含めるよう定義が拡大されました。FDAは2026年2月にも、アレルゲンの「閾値(しきいち)」設定に関する公開会議・意見聴取を実施しており、表示制度の見直しは継続中です。
②英国で小児食物アレルギー研究の優先課題トップ10を策定(2026年7月6日発表)
英国ブリストル大学のCAESAR(Centre for Applied Excellence in Skin and Allergy Research)が主導する「James Lind Alliance」の患者参加型優先課題設定パートナーシップが、2026年7月6日、英国における小児食物アレルギー研究の優先課題トップ10を公表しました。患者・介護者・医療従事者・研究者が共同で議論し、子どもや若者、その家族にとって本当に重要な研究テーマを特定する取り組みで、今後の研究助成の方向性にも影響するとみられます(出典:University of Bristol 公式ニュース)。
日本との比較
米国では木の実類の対象範囲を23種から12種へと絞り込み、ココナッツを対象外とする「引き算」の動きが見られる一方、日本では2026年4月にカシューナッツを義務表示品目に追加するなど「足し算」の方向で規制が進んでいます(詳しくは本サイトのカシューナッツ・ピスタチオの表示義務化まとめで解説)。同じ「木の実類」というカテゴリーでも、国や地域によって症例データやアナフィラキシーの重篤度評価が異なることが、対照的な規制方針の背景にあると考えられます。研究の進め方にも違いがあり、英国は患者・家族の声を起点に優先課題を決めるボトムアップ型のプロセスを採用しているのに対し、日本は学会・専門医主導でのガイドライン整備(「アレルギーの手引き2026」など)が中心です。どちらのアプローチにも一長一短があり、当事者にとって使いやすい情報提供体制をどう築くかは、日米欧共通の課題といえるでしょう。
関連商品:セルフケアの参考に
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- ピジョン 薬用セラミドミルクローション(乳児の保湿ケアに)——早期からの保湿ケアの重要性を示す研究を踏まえ、乳児のスキンケアに使われている製品です。
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- 新版 食物アレルギーのすべてがわかる本(海老澤元宏 著)——診療ガイドライン策定にも携わる専門医による解説書です。
まとめ
2026年7月現在、国内では乳児期の早期治療が将来の食物アレルギーリスクを左右する可能性が示され、原因食物の重心も鶏卵からナッツ類へと移りつつあります。海外では米国が木の実類の対象範囲を絞り込む一方、日本はカシューナッツなど対象品目を拡大するなど、規制の方向性は対照的です。英国では患者参加型で研究優先課題を定める新しい試みも始まりました。国や制度によってアプローチは異なりますが、原材料表示の確認とかかりつけ医への相談という基本は変わりません。最新情報を継続的にチェックしながら、無理なく安全なアレルギー対応を続けていきましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。食物アレルギーの診断・治療・除去食の実施については、必ず医師・専門医にご相談ください。
