【2026年最新】アレルゲン免疫療法とは?SCIT・SLIT・OITの違いとオマリズマブなど食物アレルギー治療の最前線

アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量から計画的に投与し、体を慣らしていくことで症状の軽減や長期的な寛解を目指す治療法です。投与経路によって皮下免疫療法(SCIT)・舌下免疫療法(SLIT)・経口免疫療法(OIT)の3つに分けられ、日本で保険診療として広く行われているのは、スギ花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎に対するSCITとSLITです。食物アレルギーを対象とする経口免疫療法(OIT)については、日本のガイドライン上「一般診療として推奨しない」と位置づけられており、専門医のもとで慎重に実施すべきものとされています。

その一方で2026年は、食物アレルギー治療の分野で「新薬の登場」と「既存薬の終了」が同時に進む転換期を迎えています。世界初の複数食物アレルギー治療薬オマリズマブ(ゾレア)の実臨床データが蓄積される一方、世界初のピーナッツ経口免疫療法薬パルフォルジアは2026年7月末で販売終了。さらに、注射に頼らない新しいアドレナリン製剤の実用化も進んでいます。本記事では、まずアレルゲン免疫療法の種類を整理したうえで、2026年の最新トピックを公的機関・学会の情報をもとに解説します。

目次

アレルゲン免疫療法とは?SCIT・SLIT・OITの違い

アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy)について、日本アレルギー学会はアレルギー性鼻炎における「長期にわたる臨床的寛解を期待できる治療法」と説明しています。投与経路によって、次の3つに大きく分けられます。

皮下免疫療法(SCIT)

医療機関で医師の管理のもと、アレルゲンを皮下に注射する方法です。ごく少量から始めて週1〜2回程度のペースで徐々に増量し、維持量に達した後は注射の間隔をあけていくのが一般的とされています。古くから行われてきた方法ですが、アナフィラキシーなどの全身性副反応のリスクや、頻回の通院による負担が課題として挙げられています(出典:日本アレルギー学会「専門医ならではのアレルゲン免疫療法〜皮下注射法」)。

舌下免疫療法(SLIT)

舌の下(口腔底)にアレルゲンを投与する方法です。自宅で服用でき、注射の痛みを避けられることから通院負担が軽い点が特徴で、SCITと比べて全身性の副反応が少ないとされています。日本では、スギ花粉症に対するSLITが2014年、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対するSLITが2015年に開始されました。維持量の投与は一般に3〜5年程度必要とされる一方、口のかゆみや腫れなどの軽度な局所反応は投与開始後1〜2か月に高い頻度で起こるとされています(出典:日本アレルギー学会「アレルギー鼻炎に対する舌下免疫療法」)。なお、重症の喘息を合併している場合は禁忌とされるなど適応条件があり、実施できるかどうかは医師の判断によります。

経口免疫療法(OIT)と食物アレルギー

SCIT・SLITが主にアレルギー性鼻炎を対象とするのに対し、食物アレルギーを対象とするのが経口免疫療法(OIT)です。ただし、日本での位置づけは大きく異なります。

『食物アレルギー診療ガイドライン2021』は、OITを「事前の食物経口負荷試験で症状の誘発閾値を確認したうえで、原因食物を医師の指導のもとで継続的に摂取し、最終的に耐性獲得を目指す治療」と定義したうえで、OITを食物アレルギーの一般診療としては推奨しないとしています。治療中の副反応の頻度は高く、日常的に食物経口負荷試験を実施し症状誘発時に迅速に対応できる専門医が、臨床研究として倫理委員会の承認を得て、十分なインフォームドコンセントと救急対応体制を整えたうえで慎重に実施すべきものと記載されています(出典:日本小児アレルギー学会『食物アレルギー診療ガイドライン2021』第11章 経口免疫療法)。

とくに、症状の誘発閾値が不明あるいは低い場合に、自己判断で自宅で原因食物を増やしていくことは症状誘発のリスクが高く、行うべきではないとされています。OITの詳しい仕組みについては経口免疫療法とは?最新の食物アレルギー治療法をわかりやすく解説、治療法全体の比較は食物アレルギーの治療法を解説:経口免疫療法(OIT)・生物学的製剤・耐性獲得もあわせてご覧ください。

オマリズマブ(ゾレア):複数食物アレルギーへの世界初承認と実臨床データ

オマリズマブは、アレルギー反応の引き金となる免疫グロブリンE(IgE)に直接結合するヒト化モノクローナル抗体です。米国FDAは2024年2月、オマリズマブを複数の食物アレルギーに対して承認された世界初の薬剤として承認しました。対象アレルゲンはピーナッツ・卵・牛乳・小麦・くるみ・カシューナッツ・ヘーゼルナッツ・ゴマの8品目、対象年齢は1歳以上です(出典:FDA Expert Panel on Food Allergies 2026)。

NIHが実施した主要臨床試験(OUtMATCH試験)では、ピーナッツアレルギー患者の67%が主要エンドポイントを達成(プラセボ群7%)。カシューナッツアレルギーで41%、鶏卵アレルギーで67%、牛乳アレルギーで66%でも有効性が確認されました。投与は2〜4週に1回の皮下注射で、毎日の摂取が必要な経口免疫療法(OIT)に比べて患者負担が少ない点が特徴です。

2026年7月には、米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが実臨床でのオマリズマブ治療成績を発表。1〜23歳(中央値9歳)の51名(84%が複数食物アレルギー)を対象にした食物負荷試験で、89%が1,000mg以上、66%が目標量の6,000mg全量を安全に摂取できたことが確認され、臨床試験と同等の成果が通常診療でも再現されることが示されました(出典:SnackSafely.com, 2026年7月)。

パルフォルジア(Palforzia)販売終了 — 何が起きた?

パルフォルジアは、2020年に米国FDAが承認した世界初のピーナッツアレルギー経口免疫療法(OIT)薬で、4〜17歳の確定診断済みピーナッツアレルギー患者を対象としていました。製造販売元のStallergenes Greer社は、2026年7月31日をもって販売を終了すると発表しています(出典:New England Food Allergy Treatment Center)。同社は「安全性・品質・有効性に関する問題によるものではない」とし、事業上の判断であることを明言しています。

現在パルフォルジアによる治療を受けている患者について、専門家は自己判断での中断は避け、必ず主治医・アレルギー専門医に相談するよう呼びかけています。急な中止は、これまで積み上げてきた耐性(トレランス)を失うリスクを高めるためです。多くのアレルギー専門医は、医薬品グレードではない市販のピーナッツ製品を用いた院内調整プロトコルによる経口免疫療法を、パルフォルジアの代替として既に提供しています。オマリズマブのような生物学的製剤の登場により、食物アレルギー治療のパラダイムシフトが起きているとも言えます。

エピペン以外の選択肢:鼻噴霧・舌下フィルム型アドレナリン

  • ネフィー(neffy/点鼻スプレー):米国ARS Pharmaceuticals社が開発した世界初の注射不要のアナフィラキシー治療薬。既にFDA承認済みで、体重基準のみで使用可能とする適応拡大が行われ、より小さな子どもにも使用できるようになりました(出典:American Academy of Pediatrics)。
  • アナフィルム(Anaphylm/舌下フィルム):Aquestive Therapeutics社が開発した経口(舌下)投与型のアドレナリン製剤。2026年1月31日に予定されていたFDA承認を受けられず、包装の開けにくさなど「ヒューマンファクター」上の懸念を理由に完全回答書(CRL)が発行されました。同社は2026年第3四半期にNDA再申請を予定しています(出典:HCPLive)。

開発パイプライン:リメブルチニブ・経口免疫療法の新エビデンス

2026年2月27日〜3月2日にフィラデルフィアで開催されたAAAAI(米国アレルギー・喘息・免疫学会)年次総会では、ノバルティス社がBTK阻害薬リメブルチニブ(Rhapsido)のピーナッツアレルギーに対するフェーズ2データを初公開。急速な脱感作効果が確認されており、内服薬という利便性からオマリズマブに続く選択肢として注目されています(現在は慢性特発性蕁麻疹にのみ承認、食物アレルギーへの応用は研究段階)。

経口免疫療法(OIT)の研究も進展しています。2026年1月発表の研究(Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice)では、未就学児へのカシューナッツ・クルミのOITで81.4%が4,000mgの経口食物負荷試験に成功。米国ノースカロライナ大学では舌下免疫療法(SLIT)の臨床試験が2026年6月に開始され、2028年末までの完了が見込まれています。

日本の研究動向と海外との比較

日本国内でも、急速経口免疫療法の臨床試験で鶏卵アレルギー88%・牛乳アレルギー84%の患者が目標量摂取に成功するなど、研究レベルでの成果は着実に積み上がっています。国立成育医療研究センターは、牛乳アレルギーを持つ4歳未満児への緩徐微量経口免疫療法(SLOIT)実施後、3年後の耐性獲得率を予測する数理モデルを日本で初めて開発しました。

一方で、日本ではオマリズマブ・リメブルチニブとも食物アレルギーへの適応は承認されていません(2026年7月時点)。オマリズマブは気管支喘息・慢性蕁麻疹・花粉症の治療薬として国内で保険適用されており実績もありますが、食物アレルギーへの適応拡大にはPMDAへの申請・審査が必要で、米国承認後2〜5年ほどかかるケースが多いとされています。アドレナリン自己注射薬も日本国内で承認されているのはエピペン(注射)のみで、鼻噴霧・舌下フィルムといった非注射型製剤は国内未承認・未発売です。経口免疫療法についても、日本では保険適用された市販薬はなく、大学病院やアレルギー専門施設における自由診療・臨床研究が中心となっています。

治療・薬剤 米国の状況 日本の状況
オマリズマブ(食物アレルギー適応) 2024年2月承認済み 未承認(喘息等の適応のみ)
ピーナッツOIT薬 パルフォルジア(2026年7月31日販売終了) 承認された市販薬なし
アドレナリン自己注射 エピペン+neffy(鼻噴霧、承認済み) エピペンのみ
舌下フィルム型アドレナリン アナフィルム(未承認、審査継続中) 未承認・未申請
リメブルチニブ 慢性蕁麻疹に承認、食物アレルギーは研究段階 未承認

まとめ

2026年は、食物アレルギー治療において「既存薬の終了」と「新しい薬剤・投与手段の登場」が同時に進んだ節目の年です。オマリズマブの実臨床データの蓄積は複数食物アレルギーを持つ患者にとって大きな希望となる一方、パルフォルジアの販売終了は代替治療への移行を意味し、主治医との相談が欠かせません。日本ではまだこれらの新しい治療選択肢のほとんどが未承認のため、今後もPMDAや日本アレルギー学会の動向を継続的にチェックしていきましょう。

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