米国食品医薬品局(FDA)が2025年1月に確定させた食品アレルゲン表示ガイダンス改訂(第5版)が、2026年に入っても業界・消費者双方に影響を広げている。あわせてFDAは2026年2月、コンタミ(意図せぬ混入)表示である「may contain」表示を、定性的な注意喚起から科学的な「閾値(しきいち)」に基づく定量的な表示へ転換できないか検討する公開ヒアリングを実施した。日本の表示制度とはアプローチが大きく異なるため、その違いを整理して紹介する。
FDAガイダンス改訂(第5版)の主な変更点
FDAは2025年1月、食品アレルゲン表示に関する質疑応答集「Edition 5」を公表した。主な変更点は次の3つだ。
1. 木の実(トリーナッツ)の対象を23種から12種に整理、ココナッツを除外
これまで表示義務の対象としていた木の実の種類を23種から12種に絞り込んだ。特にココナッツは植物学上も臨床的なアレルギーの実態からも他の木の実と性質が異なるとして、今後は「Contains: tree nuts(coconut)」のような表示対象から外れることになった(FDA公式FAQ)。
2. 「卵」の定義を鶏卵以外の食用鳥卵にも拡大
アヒル・ガチョウ・ウズラなど、鶏以外の食用に供される鳥類の卵も「卵」として表示義務の対象に含まれることが明確化された。
3. 「乳」の定義を牛以外の反芻動物の乳にも拡大
ヤギ・ヒツジなど、牛以外の家畜化された反芻動物の乳も「乳」として扱われることになった。
「may contain」表示を閾値ベースに転換する検討
FDAは2026年2月、コンタミ表示(「may contain」「made in a facility with」等)について、これまでの一律の注意喚起表示から、症状を誘発する量の科学的知見(閾値)に基づいた表示へ転換できないかを議論する公開ヒアリングを開催した。意見募集は2026年5月19日に締め切られ、現在FDAは寄せられた意見をもとに規制・ガイダンスの方向性を検討している段階にある(FARE(Food Allergy Research & Education)解説記事)。実現すれば、消費者は「どの程度のリスクがあるコンタミなのか」をより具体的に把握できるようになる可能性がある。
専門家・公的機関の見解
米国の患者支援団体FAREは、今回のガイダンス改訂について「表示の正確性を高める前進」としつつ、閾値表示の実現には製造現場での定量的な検査体制の整備が課題になるとの見方を示している(出典:FARE公式サイト)。
日本の表示制度との比較
日本の食物アレルギー表示制度は、消費者庁が「特定原材料」(義務表示、2026年4月からカシューナッツを追加し9品目)と「特定原材料に準ずるもの」(推奨表示、ピスタチオ追加で20品目)という品目リストを個別に追加・改定していく方式を取っている(消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)。これはカシューナッツ・ピスタチオの表示義務化でも触れた通り、対象品目を一つずつ精査して追加していく積み上げ型のアプローチだ。
一方、米国FDAの今回の改訂は、木の実・卵・乳という「食品カテゴリーの定義そのもの」を見直す点、そしてコンタミ表示を「量」で評価する閾値ベースの発想を取り入れようとしている点で、日本とはやや異なる方向性を持つ。日本ではコンタミに関する表示は「入っていた可能性があります」といった注意喚起にとどまり、閾値に基づく定量的な基準は法制度としてまだ整備されていない。木の実アレルギーが増加傾向にあるという課題は日米で共通しており(くるみ・木の実アレルギー対策ガイドも参照)、今後の日本の制度設計においても、米国の閾値表示に関する議論の行方は参考になりそうだ。
まとめ
米国FDAは2025年1月のガイダンス改訂で木の実の定義を23種から12種に整理してココナッツを除外し、卵・乳の定義を対象動物種の面で拡大した。さらに2026年2月には、コンタミ表示を閾値に基づく定量的な仕組みに転換できないかを検討する公開ヒアリングを行い、意見募集は同年5月19日に締め切られている。日本は品目を個別に追加していく方式で表示制度を運用しており、米国の「定義の見直し」と「量に基づく評価」という2つのアプローチとは違いがある。今後も日米双方の表示制度改正の動向を注視していきたい。
あわせて読みたい記事
- カシューナッツ・ピスタチオのアレルギー表示義務化まとめ
- アレルギー食品表示の読み方ガイド:特定原材料9品目と推奨20品目
- くるみ・木の実アレルギー対策ガイド
- アレルゲン表示漏れによる食品の自主回収(リコール)最新情報
関連書籍(楽天市場)
▶ 楽天市場で「食物アレルギー ガイドブック」を探す
▶ 楽天市場で「食物アレルギー 診療ガイドライン」を探す
※本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。食物アレルギーの診断・治療・除去食の実施については、必ず医師・専門医にご相談ください。
