2026年に入り、学校や保育施設における食物アレルギー対応をめぐる制度が国内外で大きく動いている。米国では学校給食スタッフの研修を義務づける連邦法が成立し、緊急時にアドレナリンを投与できる人の範囲を広げる議論も進む。日本でも点鼻式のアドレナリン製剤「ネフィー」が登場し、現場対応の選択肢が増えつつある。今回はこれらの最新動向をまとめて紹介する。
米国「食物アレルギーを持つ子どもを守る法律」が成立
2026年1月14日、米国で食物アレルギーを持つ子どもを守るための連邦法(Whole Milk for Healthy Kids Actへの修正という形で成立)が発効した。この法律により、学校給食に携わるスタッフに対し、食物アレルギー反応の予防・認識・対応に関するベストプラクティスを含む研修モジュールの受講が義務づけられる。学校現場の「人」に着目した制度整備として注目される。(出典:Allergic Living, 2026年1月15日)
未資格スタッフによる点鼻式アドレナリン投与、解禁の動き
ニューヨーク州では、医療資格を持たない学校職員でも、注射式に限らずあらゆる投与デバイス(点鼻式を含む)でアドレナリンを投与できるよう規則改正が進められている。背景には、学校でのアドレナリン投与のうち約20%が、それまで食物アレルギーの診断を受けていなかった児童生徒に対するものだったというデータがある。米国では2013年の「School Access to Emergency Epinephrine Act」により、特定の生徒個人に処方されたものではない「常備(ストック)アドレナリン」を学校に置くことがすでに法的に認められており、今回の動きはその運用範囲をさらに広げるものといえる。(出典:NY State Center for School Health)
日本では点鼻式アドレナリン「ネフィー」が本格始動
日本では2025年9月に製造販売承認、2026年2月12日に発売されたアナフィラキシー補助治療薬「ネフィー®点鼻液」(アルフレッサファーマ)が、エピペン®に次ぐ国内2例目のアドレナリン製剤として注目されている。体重30kg未満は1mg、30kg以上は2mgを鼻腔内に噴霧する仕組みで、注射への抵抗感がある児童や保護者にとって新たな選択肢となる。薬価は1mg製剤22,975.30円、2mg製剤24,672.10円。(出典:ケアネット、日経メディカル)
日本との比較
米国では学校職員向けの研修義務化やストックアドレナリンの投与対象拡大など、「学校というシステム全体」でアレルギー対応力を底上げする制度整備が進んでいる。一方、日本ではエピペンの学校での使用について、教職員がその場に居合わせた際に本人に代わって注射しても医師法違反にならないとの厚生労働省の見解が示されており、現場での対応自体は可能とされてきた。しかし、ネフィーのような点鼻式製剤を非医療従事者である教職員が投与できるかどうかについては、2026年7月時点で学校向けの公式ガイドライン(日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」令和元年度改訂版)に明確な記載がなく、制度の整理が新しい医薬品の登場に追いついていない状況がうかがえる。研修義務化やストックアドレナリンの対象拡大という米国の議論は、日本における今後の制度整備を考えるうえでも参考になりうる。
まとめ
2026年は、学校での食物アレルギー対応をめぐり、米国での研修義務化法の成立、投与できる人・デバイスの範囲拡大、そして日本でのネフィー登場という3つの動きが重なった年といえる。制度と医薬品の両面から「いざという時に誰が、どう対応できるか」という課題への取り組みが進む一方、日本では新しい治療手段に制度対応が追いついていない部分もあり、今後のガイドライン改定の動向が注目される。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。食物アレルギーの診断・治療・除去食の実施については、必ず医師・専門医にご相談ください。
