「お子さんは卵アレルギーの可能性があります」――かかりつけ医から告げられたとき、頭が真っ白になりました。あれから3年。検査の繰り返し、慎重な除去食、保育園との連携、そして食物負荷試験。一進一退を繰り返しながらも、娘は今、加熱した卵黄なら食べられるようになりました。本記事では、当時の戸惑いから今日までを振り返り、これから卵アレルギーと向き合うご家庭に少しでも参考になればという想いでお届けします。
はじまり:離乳食で気づいた異変
娘が初めて卵黄を口にしたのは、生後8ヶ月のときでした。固ゆでの黄身をスプーンの先ほど。それまで口にしたどの食材でも問題はなかったので、特別身構えていたわけではありません。ところが翌朝、頬と耳のあたりが真っ赤に腫れあがり、目の周りもパンパン。最初は「虫刺されかな」と思いましたが、湿疹がどんどん広がっていく様子に「これは違う」と直感しました。
かかりつけの小児科に駆け込むと、「特異的IgE抗体の血液検査をしてみましょう」と勧められました。結果は卵白クラス4、卵黄クラス2。「しばらくは卵を完全に除去してください」と告げられた瞬間、私はその場で泣いてしまったのを覚えています。
除去食生活のリアル:見えなかった「卵」が見えてくる
除去食が始まってまず痛感したのは、「卵は本当にあらゆる食品に入っている」という事実でした。マヨネーズ、ハム、かまぼこ、菓子パン、お惣菜の天ぷら衣、ドレッシング、市販のクッキー、ホットケーキミックス、つなぎが入ったハンバーグ。商品の裏側の原材料表示を一つ一つ確認するのが日課になりました。
外食はほとんどNG。ファミレスの「お子様プレート」も、唐揚げの衣やオムライスのたまご、デザートのプリンと卵の関門だらけ。公園で同年代の子がたまごボーロを差し出してきて、娘が嬉しそうに手を伸ばしたとき、「ごめんね、これは食べられないんだ」と笑顔をつくりながら、心の中ではこっそり泣いていました。
救いになったのは、同じ境遇のお母さん仲間とのつながりでした。SNSや地域の子育てサークルで「卵不使用でも美味しいクッキーが作れるレシピ」「この銘柄のパンは原材料がシンプルで安心」といった情報を交換し合えるだけで、孤独感がだいぶ和らぎます。
知っておきたい:卵アレルギーの基礎データ
食物アレルギーの全国実態調査では、卵は乳児期に最も多く発症するアレルゲンで、3歳未満の食物アレルギー全体の約4割を占めるとされています。多くの場合、就学前後にかけて自然に耐性を獲得し、食べられるようになっていくことも知られています。
私自身は「そばアレルギー」の当事者ですが、そばは年齢が上がっても寛解しにくいタイプなのに対し、卵・乳・小麦は「成長とともに食べられるようになる可能性が高いアレルゲン」と言われています。だからこそ、自己流で除去を続けるのではなく、定期的な検査と医師の判断のもとで負荷試験を受けることがとても大切です。
転機:食物負荷試験で「食べられた!」
2歳半の検診で、主治医から「IgEの数値が下がってきています。加熱卵から食物経口負荷試験をしてみましょう」と提案されました。負荷試験は、医師の管理下で実際にアレルゲンを少量から摂取し、症状が出ないかを観察する検査です。
当日は朝から病院の小児科病棟へ。固ゆでの卵黄を米粒大、続いて2倍量、その2倍量と段階的に増やしながら1時間ごとに観察。心拍と顔色を見守りながら、私のほうが緊張で手汗びっしょりでした。3段階クリアして「症状ナシ」の判定が出たとき、診察室で思わず「ありがとうございます」と頭を下げました。
そこから自宅でも少量ずつ摂取量を増やし、現在は加熱卵黄であれば1個分まで食べられるようになっています。卵白はまだ慎重に進めている段階ですが、娘が「給食でケーキ食べたよ!」と笑顔で報告してくれた日のことは、一生忘れません。
3年間で実践してきた5つのこと
- 原材料表示を写真で記録する習慣――「いつ買って、何が入っていたか」をスマホアルバムに残しておくと、症状が出たときに原因特定が早い。
- 除去レベルを医師に相談――「完全除去」と「加熱卵OK」では生活の幅が大きく違うので、自己判断ではなく主治医の指示を毎回確認。
- 緊急時の対応をシミュレーション――エピペンの使い方、救急要請の流れ、保育園・学校への情報共有書類を年1回更新。
- 家族で同じものを食べる工夫――娘だけ別メニューだと寂しい思いをさせるので、家族全員が「卵を使わないレシピ」で一緒に食卓を囲む日を増やしました。
- 仲間とのつながりを切らさない――地域のアレルギーっ子サークルやオンラインコミュニティに継続的に参加し、最新情報と心の支えを得る。
同じ立場のご家族へ:一人で抱え込まないで
診断を受けた直後は「この子の食事はずっとこのまま?」「どう育てればいいの?」と不安で押し潰されそうになります。私もそうでした。けれど、医師を信頼し、定期的にフォローし、仲間と情報交換を続ければ、状況は少しずつ動いていきます。
そばアレルギー当事者の立場から言うと、「アレルギーは治らない」と思い込んでしまうのが一番もったいない。卵・乳・小麦のように成長とともに食べられるようになるアレルゲンも多いし、たとえ寛解しなくても「上手に付き合う術」を身につければ、人生の楽しみは決して狭まりません。
これを読んでいるあなたが、少しでもラクになれますように。本サイトでは、卵アレルギーをはじめ、各アレルゲンの最新情報・対応レシピ・体験談を継続的に発信していきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 卵アレルギーは大人になっても治りませんか?
A. 一概には言えませんが、卵は乳児期に発症した場合、就学前後で耐性獲得(食べられるようになる)するケースが多いとされています。必ず主治医の判断のもと進めてください。
Q. つなぎの卵もダメですか?
A. アレルギーの重症度によります。完全除去が必要なお子さんもいれば、加熱卵なら摂取可能なお子さんもいます。自己判断せず必ず医師の指示に従ってください。
Q. インフルエンザ予防接種は受けられますか?
A. 多くの場合は問題なく接種できますが、必ず事前に医師に申告し判断を仰いでください。
※本記事は当事者・家族目線でまとめたものであり、医療上の判断は必ずアレルギー専門医にご相談ください。
除去食生活で本当に役立った3つの食品カテゴリ
卵不使用の食品は年々充実してきています。3年間使い続けて、本当に助けられたカテゴリを3つご紹介します。
① 卵不使用マヨネーズ――豆乳ベースのマヨネーズ風ドレッシングが各メーカーから発売されています。ポテトサラダや唐揚げの下味にも普通のマヨと同じように使えて、家族全員で同じ味を楽しめるのが嬉しい点です。
② 米粉のホットケーキミックス――卵・乳・小麦不使用のミックス粉で焼くパンケーキは、もちもちした食感で娘の大のお気に入り。週末の朝食の定番になっています。フルーツとメープルシロップを添えれば「お店のスイーツ」のような満足感です。
③ アレルギー対応の冷凍ハンバーグ・お惣菜――専門通販を利用すると、卵・乳・小麦すべて不使用の冷凍食品が手に入ります。忙しい平日の夜や、外食できない日のお助けアイテムとして冷凍庫に常備しています。
保育園・小学校との連携で気をつけたこと
娘が保育園に入園するタイミングで、栄養士さん・担任の先生・園長先生との面談を行いました。「生活管理指導表」という書類を主治医に書いてもらい、提出したうえで給食の代替対応について綿密に打ち合わせ。お盆・運動会・遠足といった特別な行事の食事についても、その都度確認するようにしています。
大切なのは、「先生にすべてお任せ」ではなく「親も一緒に運用に関わる」姿勢です。月1回は連絡帳で給食の様子をやり取りし、新メニュー導入時は事前に原材料を共有してもらえる関係性を築けたことで、安心して送り出せるようになりました。



▶ この記事を書いている人
allergy-food.com 運営者。私自身も幼少期に「そばアレルギー」と診断され、いまも当事者として食物アレルギーと付き合い続けています。本サイトでは、当事者・家族の双方の視点から、根拠のある情報と日々の工夫を発信しています。

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